2016年05月04日

「終わった人」読みました

今日読み終えたんですがおもしろい本でした。

内館牧子さんの「終わった人」

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話はすべて主人公である田代壮介の叙情からなっていて、彼が63歳で定年を迎えてからの数年間が描かれています。


人は言わば世の中で活躍するために学生時代を過ごす。そして、社会に出る。社会に出るのが平均20歳として、そこから40年間が本番で、その所属する組織からある年齢を境にお役ごめんを申し受ける。世の中の多くの人に当てはまる。

その本番を本番と捉えていた人ほどそれがなくなると終わってしまう。私がサラリーマンでもそうであろう。

この本の中では田代壮介以外にも様々な「終わった人」が登場した。

描かれていたのは終わりたくないとあがいても終わるのだということ。それを人はどう受け止めて徐々に終えていくのかを考えなければいけないということ。

そして、その人生の本番やそれにに至るまでの学生時代に、人はそれぞれの道を歩み、それが成功だ、失敗だ、学歴だ所得が多いなど様々であるが、終わってしまうとみんな同じ地点に立っているということである。

長い間お疲れ様でしたと告げられたら、私が60歳になった時、どう感じるのであろう。

公務員だった父を思い浮かべました。市役所でいろんな仕事を任せられ、取り組んでいた父もこの本の主人公のように多分考えたこともあっただろう。

人は必ず終わるんですね。世の中すべて永遠に続くことやものはありませんもんね。

333ページにありました。「思い出と戦っても勝てないのだ。勝負とは今と戦うことだ」

潔く綺麗に終えられたらそれはすごいことなのかもしれません。また、終わりに向かう大きな力や渦の中で、終わりたくない、まだまだやりたいと思うことも人間ですから、とってもわかる気がします。


最後に、男と女を描く内館さんの描き方、表現もとってもいいなと思いました。そういうふうに思っているんだよと共感できるから。

もう読まれた方もおられると思いますが、まだの方はよかったら読んでみてください。









posted by orangeknight at 18:17
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